「声の無いこの映像を見てハッと思った」
「なに?」
「ファルコンの発進シーンだけ抜き出すと特撮テイスト、それともウルトラ系なんだよ」
「本当に?」
「上手く説明できないが、俺の皮膚感覚がこれはウルトラだと囁くのだ。ライダーや戦隊の感覚ではない」
「えー」
「そこから逆算すると、ワンダバでというオーダーも適切だ」
「既にそこはヤマトから足を踏み外しているわけだね。しかしなぜ?」
「うん。アニメでこの感覚は普通やらない。なぜなら作画に凄く手間がかかるからだ。CGがアニメに導入されて可能になった表現だと言えるが、実はこの手の表現は特撮的には珍しくない」
「回転しながら上昇してくるタロウのZATの機体とか?」
「タロウは戦う♪ ってちょっと違うような気もするけどな。でも良く分からない」
オマケ §
「驚いた」
「何が?」
「面白いコミックだ。それが無料で読めるとは。J-COMIさまありがとうと感謝しながら読め」
「そんなに面白い?」
「面白い漫画ならいくらでもあるが、本当に良く出来ている漫画はそれほど多くない」
「ひ~。しかし、ヤマトの文脈で語るべきものか?」
「おお、その点だ。実はあるのだ」
「なぜ?」
「以下の2つの点で捨て置けなかったのだ」
- ヤマトもストーリーのベースは西遊記である
- 敵と味方の軸が曖昧化するのは2199的である
「じっくり話を聞かせろよ」
「まず西遊記は有り難いお経を取りに天竺に行くのだが、ヤマトは放射能除去装置を取りにイスカンダルに行く。基本構造は同じ」
「うん。だけど今さら西遊記を取り上げる意味があるのかい? ドラえもんだってドリフだって西遊記やってるよ」」
「それがあるのだ。このコミックは西遊記の物語を驚くほど大胆に壊しているからだ」
「どこがどう違うんだ?」
- 三蔵法師と孫悟空とハッカイと沙悟浄の話……ではない
- 三蔵法師は冒頭で死んでしまい、妹が復讐に出る
- 孫悟空は基本的に敵である
- 最初に主人公の味方になるのは孫悟空の毛から産まれたコピーである
- 敵の魔物が三蔵法師一行に化けて天竺を目指し、それを追う
- ハッカイに相当する豚のおっさん、沙悟浄に相当する年増の怖い女も仲間になるが、実は人間と魔物だと気づかないで仲間になる
- 人間と魔物だと分かった後、単独行動することになる。つまり、ここで西遊記風4人組ですら無くなる
- その他いろいろ
- 敵の幹部に世界観を壊すようなウサギ耳少女がいるが、ちゃんと最後に必然性と理由があって存在していたことが分かる
「なんだこれは」
「うん。だからね。この話は基本的に孫悟空が悪として君臨する話なのだよ。主人公は三蔵法師の妹で宗教少女でもなんでもない。ただの女の子。そして、主人公のパートナーは孫悟空の分身の1つ。人間と魔物と知らずにパートナーになって一緒に旅をする。仲良くなった後で、その事実が分かる」
「なんてエグイ話なんだ」
「ドキドキして面白いぞ」
「ひ~」
「だからさ。形式上の敵対者と実際の敵対者が一致していないわけだ。形式上の敵同士が呉越同舟してしまう。これは2199の第三章的な世界観と一致する」
「なるほど。期せずして、2199の流れと似ているわけだね」
「そうだ。そこがとても興味深い」
「なるほど」
「一気に読まされたよ」
「しかも、2199を考えるヒントにもなりそう……ということだね」